『震度7の生存確率』が、強烈なパンチを喰らわしてきた話。
今年で10年を数えた東日本大震災。当時大学生だった私も、今や結婚して2人の乳幼児を育てるママとなりました。
整理収納に興味を持ち、防災備蓄にも静かに取り組んできた私。しかし実は静かに逃げてきたことがありました。そんな私に強烈なパンチを喰らわした本があります。仲西宏之・佐藤和彦著『震度7の生存確率』です。
(現在おそらく書店では手に入らないです、中古か図書館へ)
帯を見て興味を持って読みました。
巨大地震発生!その瞬間、生き残れるか?
ありそうな状況に基づくQ&Aで
あなたの生存確率がわかる!
たとえば……
問:学校で授業中に地震が発生しました。その時、あなたは?
答:「すぐに机の下に身を隠す」
と答えた人は大間違いです!
え、机の下に潜るのって間違いなの!?
防災といえば小学生時代の防災訓練。みんな揃って防災頭巾を被って机の下に潜った思い出です。それが間違いだと……?
引き込まれて読んでみました。まずは色々なシチュエーションに於けるQ&A(3or4択)が18問あり、そこで自分が発災の瞬間生き残れる判断ができるかどうかが試されます。つらい。
その後、各解説と、実際に震度7の地震(メインは首都直下や南海トラフ+過去の阪神淡路・熊本地震)の時に起こる色々な事象を解説し、対策を示しています。最初のQ&Aで心がやられるので、凄く真剣に読む自分がいます。
そして最終章では、想定シナリオのフィクションストーリーが書いてあるのですが……もう読んでてつらい。首都直下地震が起き、その3か月後に南海トラフも発生するという、なんかもう日本沈没よろしくな話。ただそこに遭遇した個人目線で話が綴られ、かつ本を通しで読んだ人間には前章までにおさらいが詰め込まれているため、とてもリアリティを持って読める話となっています。SF~!と思えない自分がいました。
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今までの防災本は、基本的に事前準備と、発災後の長期避難で必要となる備蓄関係が多かったと思います。いや、発災の瞬間の話も書いてあるのですが、そんなにページが割かれていない、もしくは自分が心の中でスルーしていました。とにかく頭と首を守る体制をとるのね!みたいな感じ。
でもこの本は、とにかく発災の瞬間と、そこから3時間以内位に重きを置いています。筆者が阪神淡路大震災の被災者で、そのタイミングを生き延びられないと備蓄に意味はないと思っているからです。
阪神淡路大震災を体験した夫は同じことを主張していましたね。津波被害の大きかった東日本大震災の被災者とは、また違った感覚だと思います。
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本の中のインタビューで、防衛医科大の秋冨准教授がこのように語っていました。
私は時間軸で考えることが必要だと常々言っています。
まず、10の0乗の時間軸。これは1時間以内のことです。発災から1時間以内は、自分が助かることに全力を尽くす時間帯です。
次が10の1乗で10時間以内になります。自分の安全を確保したら友人隣人の救助に取りかかります。(中略)
10の2乗になると100時間までです。避難所生活に移る時間帯ですが、発災から100時間、目安は5日以内ですが、この間は行政からの支援は十分に届かないと覚悟しておいてください。(中略)
10の3乗の1000時間は復旧の時間帯に入ります。このフェーズに入ると犯罪が発生したりしますので、犯罪から身を守ることも考えなければなりませんし、ボランティアの活動もこの頃になると本格化します。
最後に1万時間、つまり約1年です。1年経つと復旧から復興のフェーズに入ります。
この時間軸の話を読んだ時に、自分が今まで意識していたのはどこだろう?と思いました。もしかしたら、10の0乗と1乗のことは、意識していなかったかもしれません。漠然と、被災しても死なないと、更には怪我をしないと仮定していました。だから帰宅困難になった時のことや、自宅避難の話ばっかり考えて準備していました。本当は、すっぽり抜けた時間帯のことを考えないといけないのに。
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この本は、私が過去に読んだ本の中で一番、その瞬間に生き残ることについて考えさせてくれました。でもこの本は現在書店では取り扱いがないと思われます。ネット通販でも中古しかありませんでした。大真面目な本なのに、あまりにヘビー過ぎてで売れなかったのかしら……。
人は死について考えるのは、つらいことを直視するのは怖いから。絶望的な気持ちになって、救いがない気がしてしまうから。もっとライトというか、手軽に始められるような防災の本が売れるのだと思います。それでも私はこの本に出逢えて、防災の優先順位がガラリと変わりました。
私のように「あー、家具の固定とかやらないといけないんだけどなー、わかっちゃいるんだけどねー」と二の足を踏んでいる人がいたら、とてもおすすめです。
よし、行動に移すぞ!