おうちのモヤモヤ退治

余白がほしい

モヤモヤを退治したくて。家や服のことなどを。

痴漢被害に遭ったらほぼ半日潰れた話。

 ちょっと前にニュースで痴漢の疑いをかけられていた人が事務所窓から転落死した話を見ました。yahooコメント欄では「でっちあげの被害者」という意見や「やっていないなら絶対に駅事務所に行ってはならない」というアドバイス?や「いや冤罪かどうかわからないじゃん」という意見やらが飛び交っていました。


 痴漢。この話が出るたびに「冤罪」「でっちあげ」という単語が飛び交います。映画【それでも ボクは やってない】で取り上げられた辺りから認知度があがった印象です。

それでもボクはやってない


 しかし思う。皆ライトに「でっちあげ」とか言うけれど、痴漢被害者が痴漢の犯人を告発しした後どうなるかって知っていますか?男性恐怖症や心的なトラウマの話ではなく、事務的な話です。

 私は5年ほど前に痴漢被害に遭い、半日ほど潰れました。そう、痴漢被害に遭って告発すると、被害者も時間をとられるのです。でっちあげとか時間もかかっていい事なんてほとんどないんじゃないかしら。と思ったので体験談を書いてみようと思います。


***


ある冬の朝の満員電車。快速のため、停車駅間が5分近くあります。ぎゅうぎゅう。私は膝丈のコートを着て、リュックを背負い、下半身はブーツ+タイツ+スカート+毛糸のパンツ+下着、という完全防寒スタイルでした。マフラーもぐるぐる巻き、化粧も薄めで色気0。

 そんな中なんとなく分厚いウールのコートの上からお尻に何かが当たっているのを感じました。「かばんかな?」と放っておいたら、なんだか動いている気がする。「え、痴漢?」となるも「いや勘違いかもしれないし」と様子見。その後タイツを履いた脚を触られて「んんん!?」となりました。

 この時私に浮かんだのは【それでも ボクは やってない】。「冤罪で他人の人生を崩壊させちゃダメ!決定的に痴漢だと断定できるまではダメ!」と思い、まだまだ耐えて様子見。停車駅で離れたので、まぁいいかとなりました。

 しかしまた走り出した車内で痴漢再開。またタイツ越しに脚を触ってくるのでいい加減に手を後ろに回してどけようとする私。しかし満員電車過ぎて腕が届かない。攻防をしばらく続けていると、ついに上がってきた痴漢の手が私の毛糸のパンツの裾から侵入。これはもう確定ではないか!

 がっと腕を掴み「痴漢です!」と叫ぶ。幸い周りの男性方が良い方ばかりで皆さんで一斉に確保して押さえつけてくれました。まじでいい人達(というか痴漢って男の敵でもある気がする)。駅に停車して引き摺り出してくれました。途端に逃走しようとする犯人に「おい逃げんな!」と言い、「俺が駅員呼んできます」と呼びに行ってくれた方、本当に有難うございました。ちなみに私の心的トラウマはなし、直接触られてもいないしね。


 さてここからが大変の始まり。この時朝の8時半。まず駅員さんがなかなか来ない。そして来た駅員さんが「警察呼んできます」でまた居なくなる。この間駅のホームで犯人とご協力いただいた男性方と待ちです。なんだこの構図。暫く待ってようやく警察に出向くことになりました。「善良な一般市民は警察に協力しますわよ」と思い、パトカーで最寄りの警察署へ。


 警察署の一部屋(3階、事務所繋がりの奥の部屋)に入り、ソファに座ります。容疑者は別室。女性の警官がやってきて聴取を取られます。犯人の手をどちらの手で捕まえたのかは記憶になく(両手でトライしていたため)、それでも状況を説明し、聴取というか、申立書みたいなものを代理で作成してもらいました。ふぅこれでおしまいかしら、と思いました。


 というか喉が渇いた。朝から何も飲み食いしていない私(※会社のデスクでお茶とちょこっと食べる生活)ので喉がカラカラ。被害者が協力してるんだから「怖かったでしょう?」とか言うならお茶かお水出して欲しい……と思わず思ってしまいました。


 別室で代筆いただいている間に他の警察官にも当時の状況を説明することに。終わらない、終わらない。今度は男性の警察官数名に同じ事を話し、なんだか警察官は複数人で再現みたいな事をし始めました。まぁ証言に状況的な矛盾がないか検証するのって大事ですもんね。

 ここで私が「毛糸のパンツの中に指が入り込もうとしたので……」と言うと「毛糸のパンツって何?」みたいな議論が始まり。なんで痴漢被害に遭った上で(男性の)警察官に毛糸のパンツの説明しないと行けないんだよぉぉぉお!となりました。「毛糸でできた短いスパッツとかブルマみたいなやつで……」と何度も説明しても通じなかったので「脱いで実物見せましょうか?」と言ったら「いやそこまでは」とお開きになりました。辱めよ。


 そして喉が渇いた。しかたなく「飲み物買いたいのですが」と言ったら廊下ににある自販機を案内されたので買いに行きました。すでに時刻は11時を過ぎています。お腹も減った、カツ丼とか出てきませんよ。


 その後女性警察官が作成した申立書を見せていただいて内容確認。書き出しが「私は、」だったのが少し面白かったです。そして別室で聴取されていた容疑者が罪を認めたと明かされ、今後の流れについて確認しました。服は証拠になるのでしばらくは洗濯しないでおく事、容疑者の弁護士(国選)から示談?の連絡が来る事。といっても容疑者は未成年だったので、示談金で晴れ晴れという訳にはいかず、施設に入る事になるそうでした。


 ようやく終わったのがお昼過ぎ。階段のところで「ではご協力ありがとうございました」と挨拶されて私は警察署を出ました。


 え、ここどこ……?


 来た時はパトカーだったので警察としか思っていませんでしたが、普段全くこないところの警察にいました。帰りの送りはないため、自力で駅にたどり着かなければなりません。「まぁこっちかな」くらいで歩いたら全然辿り着きませんでした。今地図見たら最寄駅まで徒歩2分でした、恥ずかしいな。

 

 そんなこんなで空腹で駅に着いたのは午後1時を過ぎていました。服は証拠になるので暫く保存した方がいいとのこと。一回家に戻って、お昼ご飯食べて、また出勤したら午後4時近くなる……もういいや、と思って上司に連絡し、そのまま有給休暇をとりました。何にも良いことのない有休消化です。


 その後、国選弁護人との数回のやりとりのもと示談金等が振り込まれて終了しました。


***


 いかがでしょう。長くなりましたが私の痴漢被害の後の流れはこんな感じでした。もし私が「早く出勤したい」と言ったら違っていたのかもしれませんが、真面目に対応したら4時間以上かかりました。お腹も減ったし喉も渇きました。これを経験すると、痴漢のでっち上げだなんて気軽には言えません(ちなみに意図しないで冤罪だった場合は事情が違う)。

 

 痴漢逮捕と言えばほとんどセットで「冤罪」や「でっち上げ」が出てくる昨今。どうか考える時の材料に、経験談を使っていただければと思います。